FRPの代表的な成形手法
FRPには様々な成形手法があります。中間基材の性状によって、湿式成形と乾式成形に分されます。 成形方法の決定は製品の用途、形状、期間生産量などによって選択されます。 ここでは、その代表的な手法の幾つかを紹介します。
Ⅰ. 湿式成型
ハンドレイアップ法(Hand Lay-up/HLU)
成形型に強化材を予めチャージさせ、樹脂を刷毛やローラーで含浸、脱泡しながら所定の厚さまで積層する成形方法です。FRP成形の基本手法です。
長所
- 多品種少量生産に適している
- 設備投資が少ない
- 大型成形品が常温・無圧で成形できる
短所
- 作業環境が悪い
- 無圧成形であるため繊維含有率が低い
- 品質が作業者の熟練度に左右される
用途
- 舟艇・船舶、耐食機器、モミュメント等
フィラメントワインディング法(Filament Winding/FW)
ロービングに樹脂を含浸させ、回転する芯金(マンドレル)にテンションを掛け、所定の角度で連続して巻きつける成形方法
長所
- 大量生産が可能
- 繊維含有率が高く、機械的特性が高い
- 機械的成形のため品質が安定
短所
- 設備投資が大きい
- 〇℃方向の繊維配向ができない
- 円筒や球体と形状に制約がある
用途
- 圧力容器、液体輸送容器等
スプレイアップ法(Spray-up/SP)
スプレイガンからロービングを切断しながら樹脂と同時に吹き付ける成形方法です。HLU法同様、手作業に頼る工程が大きい。
長所
- 設備投資が比較的少ない
- ハンドレイアップより生産性がよい
- 中~大型成形品に適している
短所
- 作業環境が悪い
- 繊維含有率管理が難しい
- 無圧成形であるため繊維含有律が低い
用途
- タンク、浴槽、ドレンパン等
コールドプレス法(Cold Press/CP)
キャビコア型でプリフォームしたチョップドストランドとマトリクスを冷プレス加圧する成形方法です。
長所
- 設備投資費用がHP法に比して小さい
- 製品の表裏共、型面粗度で比較的、肉厚管理が出来る
- 成形型の改修が比較的容易
短所
- 常温成形のため、成形サイクルが長い
- 成形型費が大きい
用途
- コンソールパネル等
RTM法(Resin Transter Molding)
プリフォーム(補強材のみで形成された予備成形体)を成形型に配置し、型を閉じマトリクスを注入して硬化させる成形方法。多点注入、立体賦形技術等、技術開発が進んでいます。
長所
- 複雑形状を一体成型できる
- 立体賦型技術等、技術発展が望める
- 中量生産に適している。
短所
- HLUやSPに比して、設備投資が大きい
用途
- 船艇、自動車、車輛構造部品等
Ⅱ.乾式成形
オートクレーブ法(Vacuumbag Auto Crave/AC)
片型(主にコア型)に中間基材を配置し、周辺を機密にして真空吸引を行い3~8㎏、f/㎠加圧、130~ 250℃加熱する成形方法です。
長所
- 人的介圧が少なく、製品の再現性が高い
- 安定した品質と特性が得られる。
- 4M管理、トレーサヴィリティの信頼度が高い。
短所
- 設備投資費用が大きい
- 設備維持費用が大きい
- 成形副資材の廃材が発生する。
用途
- 衛星構造体、航空機構造体等
シートワインディング法(Sheet Winding/SW )
主に筒型形状に適した成形方法。加圧はシュリンクテープやAC。類似成形方法としてテープワインディングがあります。
長所
- 繊維含有率(Vf)が高いため物性が得やすい。
- 筒状成形品に適している。
- FWに比して、小型品の成形に適している。
短所
- シュリンクテープ加圧に於いては、0.02㎜程加圧跡が生じる
用途
- ゴルフシャフト、釣竿、ロール、ロボットハンド等
SMC法(Sheet Molding Compound )
チョップドストランドに樹脂を含浸させ、両面をジンシートで被覆させた中間基材を成形型にチャージし加熱加圧する成形方法です。
長所
- 材料歩留りが高く、成形サイクルが短い。
- リブやボスが同時成形できる。
- 品質のバラツキが小さい。
短所
- 設備投資費用が大きい。
- 短繊維のため、性能がやや劣る。
- 成形型費が大きい。
用途
- 浴槽、浴室壁、自動車構造部品等
BMC法(Balk Molding Compound )
チョップドストランドとマトリクスを混練した中間基材を塊状(団子状)にして、圧縮成形する成形方法です。
長所
- 材料歩留りが高く、成形サイクルが短い。
- 複雑な形状品に適している。
- 品質のバラツキが小さい。
短所
- 設備投資費用が大きい。
- 短繊維のため、性能がやや劣る。
- 成形型費が大きい。
用途
- 複写機部品などの事務機器、光学機器のハウジング等
ホットプレス法(Hot Press/HP)
キャビコア型で加熱加圧する成形方法です。派生手法としてスタンパプルシート法があります。
長所
- 成形サイクルが比較的短い。
- 材料歩留りが比較的高い。
- 品質のバラツキが小さい。
短所
- 設備投資費用が大きい。
- 成形型費が大きい。
用途
- パソコン筐体、自動車部品等
特殊型成形
当社独自の脱AC(Auto Crave)的手法で、型構造等により内圧と外圧を同時にかける成形手法です。
長所
- 設備投資が小さい。
- 偏肉、異形状の成形が可能。
- 多数個取り成形が可能。
短所
- 成形型の有効ショット数が小さい。
用途
- 異形断面、偏肉チューヴ等